幼い子どもに英語を習わせる必要はあるのか

英語力向上

赤ちゃんの頃から英語のシャワーを浴びせて英語耳を養う、小さい頃に英語を習わせて英語脳を育てる――巷で言われる先手必勝の英語学習アプローチ。実際のところ、どうなのでしょうか。

この記事では、幼い頃の記憶と早期外国語教育の関係について考えてみます。
小さなお子さんに英語を教えたいなと考えている方は、ぜひお読みください。

幼児期の言語習得に対する二つの見方

幼児期は言語習得の最も重要な時期であり、複数の言語に触れることで言語能力や認知能力が高まるという研究があります1

一方で、幼児期に習得した言語をその後使わなくなると、忘れてしまう可能性が高くなります。その根拠が幼児期健忘です。

幼児期健忘

ちなみに、あなたは幼少期に起こった出来事を思い出せますか?
おそらく、ほとんどの人は覚えていないでしょう。

これは、幼児期健忘と呼ばれる現象です。幼児期健忘は、脳の発達段階や記憶形成機構などによって起こるもので、人間に共通する現象です。

では、この幼児期健忘は、早期外国語教育にどのような影響を与えるのでしょうか?

繰り返しになりますが、幼児期健忘とは、幼少期に起こった出来事を大人になっても思い出せない現象のことです。一般的には、3歳以前の記憶はほとんど残らないと言われています。

この「記憶」にはもちろん言語も含まれます。

言語に関する幼児期健忘の例

例えば私もこんな人を実際に知っています。

  • 5歳まで母国のフィンランドで育ち、その後移住したため、30代の今、母国語は一切覚えていないというフィンランド系カナダ人
  • 親の仕事の関係でアメリカで生まれ、3歳までアメリカで育ったが、帰国後は成人するまで日本在住。英語はそこまで上手ではないのが悩みという日本人大学生

ほかにも検索すればいろいろな例が出てくると思います。
せっかく習得した言語も、使わなければ失われてしまうのは、もったいない話ですね。

幼い頃に外国語を習わせても無駄なのか

これは、小さい頃から外国語を習わせても無駄だということになるのでしょうか。

まず、英語を例にとって早期に学ぶメリットとデメリットについてみていきましょう 。

メリット

幼い頃から英語を学ばせるメリットには以下があります。

  • 英語に対する抵抗がなくなる
  • 英語を英語のまま理解する脳が発達する
  • 英語耳が発達する
  • 視野が広がる
  • 多様性を受け入れられる

これらのメリットは、幼少期における言語学習能力や感覚的イメージの発達、異文化への接触などによって得られるものです。

デメリット

一方、以下のようなデメリットも。

  • 日本語や母国語の習得が遅れる可能性がある
  • 英語学習に対するモチベーションや興味が低下する可能性がある
  • 英語学習にかかる費用や時間が負担になる可能性がある
  • 英語学習に適切な指導者や教材が見つからない可能性がある

これらは、日本社会や家庭環境、個人差などによって生じるものです。

幼児期健忘は早期英語教育にどう作用するのか

さて、ここで幼児期健忘と早期英語教育の関係について考えてみましょう。
幼児期健忘は、脳の発達段階や記憶形成機構などによって起こる現象です。
つまり、幼少期に起こった出来事は、記憶として残っていても思い出せないだけであり、消えてしまったわけではありません。

しかし、これは必ずしも良いことではありません。
なぜなら、記憶として残っていても思い出せないことは、その知識にアクセスできないことを意味するからです。

例えば、幼いころに学んだ単語や文法は、記憶として残っていても、思い出せなければ使えない知識になってしまいます。
また、幼い頃に学んだ英語の音やリズムは、記憶として残っていても、思い出せなければ、発音や聞き取りに影響を与える可能性があります。

つまり、早期英語教育で学んだ英語が、安定した記憶として残らないかもしれません。

結局のところ無駄なのか

ということは……早期英語教育は無駄なのでしょうか。

そうとも言えません。
なぜなら、幼いころに学んだ英語は、記憶とは違う形で身に付いている可能性があるからです。

例えば、英語脳や英語耳は、幼少期に英語に触れたことで発達したものです。これらは、大人になってからも使える能力です。
また、視野や多様性の受け入れやすさも幼少期に異文化に触れことで育まれたものです。これらは、大人になってからも価値のある感覚です。

つまり、幼いころに学んだことを、具体的な単語や文法として思い出せなくても、英語を使う「能力」や「感覚」として残っているのです。これは何とも心強いことではありませんか!

早期英語教育のコツ

以上のことから、幼児期健忘の影響を受けても無駄ではないと言えます。
むしろ、幼少期に英語に触れることで得られるメリットは大きいと言えます。

しかし、早期に英語を学ばせる場合は、以下のコツを意識すると良いでしょう 。

  • 子どもの自主性や興味を尊重する
  • 親も一緒に楽しく学ぶ
  • 日本語や母国語の習得も大切にする
  • 発達段階にあった指導者や教材を選ぶ
  • 英語学習にかかる費用や時間を考慮し、無理はしない
  • 継続的に英語の遊びやメディアなどに触れされる

子どもの将来を思ってのこととはいえ、無理や強制は禁物です。
一人ひとりのペースや個性に合わせて、楽しく効果的な英語学習を行うことが大切です。

また、仮に忘れた場合、再習得は可能ですが、その際には再びその言語に触れる機会を増やすことが重要です。

子どもに英語体験を意味ある形で提供しつづけることで、英語の「感覚」と「能力」を刺激し続けましょう。そうすることで、英語が生きた記憶として残りやすくなり、必要なときに思い出しやすくなるはずです。